春夏秋冬
「真実ー」
昼休み、真実の名前を呼びながら冬吾くんが教室に入ってきた。
「あれ、真実は?」
席に真実の姿がないことに気付いて、あたしに尋ねる。
「今日、日直で。宿題のノート持って行ってる」
「そっか」
あたしと冬吾くんが話していると、何人かがチラチラとこっちを気にしているのがわかった。
冬吾くんはいつの間にか真実の席に座っている。
あたしは小声で尋ねた。
「冬吾くんは真実が髪切ったこと、知ってたの?」
「あー、うん。あいつの髪切ったの俺だし」
「えっ!そうなの?」
「そうだよ。昨日の夜、11時ぐらいだぜ?ランニングから帰ったら家の前に真実がいんの。何事かと思ったら、髪切りたくなったけど美容院が開いてないから俺に切れって…」
「余計なこと言ってるんじゃないでしょうね、冬吾」
いつの間にか戻って来ていた真実が、無表情でそこにいた。