春夏秋冬
やわらかな日々。side真実

やわらかな日々。





サナの涙を見た日以降、学校での矢島悠斗の堅さ、というか、どこかにあった違和感のようなものが無くなったような気がした。

そして、サナも。


「真実、パン買いに行こ!」


振り返ると笑顔のサナがいた。


「うん」

私はサナの横に並んで歩き出した。

「今日は何にしようかな」

考えながら歩くサナを見つめる。

大きな黒目、桃色の頬。


「サナ、なんか綺麗になったね」


思わず呟くと、サナは目を真ん丸くして、そして笑った。


「やだー、もう!何言ってるの」

「だってそう思ったんだもの」


私達は普通の高校生なのだ。今までも、そしてこれからも。

他人を全て背負い込むにはまだ早過ぎる。

もっと強くなって、もっと大人になって。

少しずつ寄り添って行ければいいんだろう。




「真実ー!俺の焼きそばパンも」

冬吾が隣の教室の窓から叫ぶ。

廊下の端で、他の男子と談笑する矢島悠斗が見える。

それでいいのだ、今は。


――――いつか、私にも寄り添える相手が現れるといい。







END
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