春夏秋冬

「お、おう!言ってねーよ!なにも!」

冬吾くんがぎこちなく答えた。

「今言ってなくても、もう少ししてたら言ってたみたいな感じね」

「言わねーって、マジ」

「そう、で?何の用?」

「あ、そうだ!英和貸して!」

「また?」

「昨日、宿題やろうと思って持って帰ったら忘れちまって」

冬吾くんのいいわけを聞いて、真実は面倒そうに、ロッカーから辞書を持って来て、

「珍しい事はしないほうがいいわよ」

と言って渡した。

「おお、ありがと」

冬吾くんは辞書を受け取ると跳ねるように教室から出ていった。
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