春夏秋冬
冬吾くんを見送ると、ふいに真実は、真剣な顔をした。
「…冬吾に、なにか聞いた?」
「ううん。あ、その髪、冬吾くんが切ったってことは聞いた。すごいね、冬吾くん。髪切るの上手」
あたしの言葉に、真実は気が抜けたように笑った。
「そうなのよ。あいつ、なんだか妙なところで器用なの」
変な奴、真実は言う。
あたしはなんだかおかしくなって笑った。
「なにがおかしいの?」
真実は不思議そうな顔で聞く。
「本当に、仲いいなって。なんだか冬吾くんって犬みたいじゃない?だから真実は飼い主かあ、なんて思っちゃって」
「やめてよー、いらないわよ。あんな馬鹿犬」
真実も笑った。
二人で目を合わせてもう一度笑うと、午後のチャイムが鳴った。