春夏秋冬
その時だった。
ガラッ。
教室の後方の戸が開いた。
あたしはビクリとしてドアを見た。
「あ、」
そこから現れたのは、
「矢島、くん」
矢島悠斗だった。
「西沢さん。ちょうどよかった」
矢島くん、あたしの苗字を知ってたのか。
「これ」
そう言って矢島悠斗は手の平に乗ったものをあたしに見せた。
「あっ!あたしの携帯!」
「ああ、西沢さんのだったんだね」
「うん。どこにあったの?」
「美術室に落ちてた。プリクラが貼ってあったからさ、西沢さんか高野のだと思ったんだよね」
あたしは、携帯に貼っていた自分と真実のプリクラに感謝した。
矢島悠斗は、あたしのところまで真っすぐ歩いて来て携帯を差し出す。
「本当にありがとう!」
携帯を受け取って、あたしは矢島悠斗にお礼を言った。
「どういたしまして」
矢島悠斗は笑った。
入学式の時の桜の木の下での笑顔が重なる。
お礼をいう立場は逆だけど。
「ありがとう、矢島くん」
あたしはもう一度お礼を言った。