春夏秋冬



「あの時みたいだね」

「え?」


突然、矢島悠斗が言った。

「入学式の時。俺のエンブレム拾ってくれたろ?」

「覚えてたんだ」

正直にそう思った。

「もちろん。西沢さんは忘れてた?」

「まさか!忘れるわけないよ」

あたしが言うと矢島悠斗が笑った。

「よかった」

たしかに、そう言って。





矢島悠斗が部活に戻って一人になった教室で、あたしは携帯をそっと握りしめた。

ざわざわとなんだか落ち着かない心を沈ませるために。



今思えば、この時のあたしは、これから先、矢島悠斗という大きな波に飲み込まれていくことを予感していたのだと思う。
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