春夏秋冬
「これかぶって」
あたしはヘルメットを受け取り、言われた通りにかぶる。
「はい、どうぞ」
もう一度バイクに乗った矢島悠斗が、ぽんぽんとシートを促す。
あたしはシートに腰をかけた。
「カバン、大丈夫?」
「あ、うん」
あたしはスクールバッグを肩にかけ直す。
「しっかりつかまってて」
矢島悠斗の声が響く。
「あ、はい…じゃあ失礼します」
「遠慮なくどうぞ」
矢島悠斗のTシャツの裾を握るだけだった手を、腕ごと矢島悠斗の体に回した。
「じゃあ、行くよ」
体中にエンジン音が響いて、バイクは出発した。