春夏秋冬
潮風が体の表面を滑っていく。

腕や、脚や、制服がはためく部分はだんだんとひんやりしてくるのに、矢島悠斗に触れている部分が熱い。

Tシャツ越しの感触は、あたしとは全然違う、男の人の体だった。

矢島悠斗は車通りを見計らって、バイクをUターンさせた。

見慣れた海岸沿いの景色が、いつもより早く過ぎていく。

「どこに行くのー?」

あたしは声を上げる。

「んー?」

くぐもった矢島悠斗の声が微かに聞こえた。

「どこに行ってるのー?」

あたしはもっと声を張り上げた。

「俺のー」

「お気に入りの場所ー」

どこか間延びした矢島悠斗の声がヘルメット越しに聞こえた。
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