春夏秋冬
矢島悠斗は笑った。
あたしも笑った。
「あたしはこっちの方が好き」
「理由があるの?」
「理由?そうだなあ…前に住んでいたところがこんな海の近くだったからだと思う。なんだか懐かしいの」
「西沢さん、引越して来たの?」
「そうだよ。中学の時に、父の仕事の都合でね」
「へえ」
矢島悠斗は、頷いて黙った。
あたしもそのまま黙っていた。
岩場の影は意外に涼しい。
足元を小さな蟹が歩いていった。
沈黙を破ったのは、あたしだった。
「矢島くん、バイクの免許持ってるんだね。いつ取ったの?」
「一年とちょっと前、16になってわりとすぐ」
矢島悠斗は横顔のまま言った。