春夏秋冬
着席の声が響いて、紺色のアリたちが席に着く。
静寂を見計らって、式は進んでいく。
斜め前の後ろ姿を、じっと見つめてみた。
新しい制服がぼんやりとした人型を包んでいるみたいに見える。
――――この人、本当に生きてるの?
今考えるとおかしいけど、その時のあたしはそう思った。
そんな矢島悠斗と初めて話したのは、入学式から何日もたってない、部活の見学期間の時だった。
部活なんて入るつもりはなかったけど、中学校の時から仲のいい先輩に頼まれたので、始めから幽霊部員になる気で美術部に見学に行った。
美術室は西校舎の三階の突き当たりにある。
他にも部活見学の子が多いのか、西校舎は意外に賑やかだ。
窓が開いているんだろう。
四階の音楽室から、吹奏楽部の楽器の音が聞こえてくる。
あたしは階段を上って、三階に着く。
賑やかな階下や渡り廊下に比べて、三階は閑散としていた。