春夏秋冬



「あ、高野」


美術室にいたのは、キャンバスに向かう矢島悠斗だけだった。


「一人?」

「まあね、先輩方はいろいろ忙しいらしい」


矢島悠斗はかすかに笑った。


「真面目に来てるやつの方が珍しいんじゃないの?」


あたしがそう言うと、そんなことないよ、と声が返ってきた。


「ドクターは、割と真面目に教えてくれる」


ドクターというのは美術部の顧問をしている男の先生だ。

若いのかトシなのかよくわからない。

ボサボサとした黒い髪に眼鏡、そして何故か所々絵の具で汚れた白衣を身に纏っていて、たまに不精髭も生えていたりする。
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