春夏秋冬


「矢島、ドクターに気に入られたんじゃないの?」


あたしは言った。ドクターは男にも興味があるという噂があった。


「まさか」


矢島悠斗もこの噂を知っていたらしく、笑った。


「で、高野も絵を描きに来たの?」


矢島悠斗が言った。


「違うわよ。矢島のアドレス聞きにきたの」

「あ、そういえば高野のアドレス知らないな、俺」


矢島悠斗が差し出た携帯に携帯を近づける。

お互いにアドレスを交換した後、あたしは言った。


「ねえ、田坂先輩にもアド教えていい?」

「田坂先輩?別に構わないけど」


あたしの言葉の意図を知ってか知らずか、矢島悠斗はきょとんとした顔で答えた。
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