春夏秋冬



あたしは少しだけ居心地の悪さを感じて、教室に戻ろうと思った。


「ごめんね、集中してる時に」


矢島悠斗の横顔に声をかけると、首が少しだけ頷いた。

振り返って、扉に向かう。
取っ手に手をかけたその時だった。


「ねえ」


声の方を見ると矢島悠斗があたしを見つめていた。


「・・なに?」


「海の色って何色かな?」


黒い瞳がまっすぐこっちを見つめている。


「え、エメラルドグリーン?」


あたしが答えると矢島悠斗は笑みを浮かべ、右手を少し上げてあたしを見送った。

その笑顔に、何故かサナの顔を思い出した。
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