春夏秋冬
そう考えて、歩き始めた時。
強い、風が吹いた。
頭上の花びらが、すごい勢いで風に振り落とされる。
足元の花びらがくるくると舞い上がる。
―――すごい、吹雪みたい。
ばさばさと揺らされる髪を押さえながら思った。
それもつかの間。
だんだんと花びらの動きが鈍くなって、重力にならって落ちていく。
薄いピンクに覆われた視界が明らかになる。
目の前に、人影があった。
走ってきたんだろう。
息が上がって、肩も揺れている。
少し長めの、色素の薄い前髪。
あたしが見上げる身長。
真新しいブレザー。
その人は、一つ、大きな深呼吸をして言った。
「それ、俺の」