春夏秋冬

そう考えて、歩き始めた時。

強い、風が吹いた。

頭上の花びらが、すごい勢いで風に振り落とされる。

足元の花びらがくるくると舞い上がる。

―――すごい、吹雪みたい。

ばさばさと揺らされる髪を押さえながら思った。

それもつかの間。

だんだんと花びらの動きが鈍くなって、重力にならって落ちていく。

薄いピンクに覆われた視界が明らかになる。

目の前に、人影があった。

走ってきたんだろう。

息が上がって、肩も揺れている。

少し長めの、色素の薄い前髪。

あたしが見上げる身長。

真新しいブレザー。

その人は、一つ、大きな深呼吸をして言った。



「それ、俺の」
< 6 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop