春夏秋冬
サナ
次の日、サナの口から矢島悠斗の名前が出たとき、あたしは声を押さえるのに慌てた。
サナに悪いことなんて、ないのに。
「…サナは矢島悠斗が好きなの?」
サナが慌てる。なんだか小動物みたいで、さっきかいた冷や汗がすっと引いていく。
サナはいい子だ。
もちろん、この歳になれば大人ほどじゃなくても多少の嘘のつき方なんて身についているだろう。
そうだとしでも、サナはいい子だとあたしは思う。
「もー」
サナが少しすねる。
「ごめんごめん」
あたしは笑う。
イチゴメロンパンの終了を告げるおばさんの声が響いた。