春夏秋冬
あたしがイチゴメロンパンを初めて買ったのは、期末テストが終わった頃だった。
イチゴメロンパン。
好きな人を思って食べると恋が叶うという、うちの学校の名物パン。
十年以上前の小説を元に、購買のおばさんの知り合いが作ったのだそう。
いつの時代も、恋する乙女の悩みは尽きないらしい。
コロッケパンに負けないくらい、売切れるのが早い。
実際は、メロンパンの中にイチゴジャムが入っているというだけのものなんだけれど。
その日はたまたま授業が早く終わって、サナがお弁当を持って来ている日で、売店には人がまだ人が少なくて、あたしの右手に山積みされたイチゴメロンパンがあって。
「おばさん、これください」
あたしはパックの野菜ジュースと共に、イチゴメロンパンを差し出した。