春夏秋冬
「真美、それって」
あたしがかじり出したメロンパンがいつものものじゃないことに、サナは気付いたらしい。
「しっ!そうだよ」
イチゴメロンパン、そう言ってこっそり断面を見せた。
クラスの女子に見せるとうるさいだろうから。
購買のパンの包装はみんな透明のビニールだから、ぱっとみは普通のメロンパンと変わりないのだ。
「初めて見た」
「あたしも初めて食べた」
「…恋の悩み?」
「そんなんじゃないけど。食べてみたかったの」
「彼氏となにかあったのかと思った」
「ないよー、何も。だいたいあたしはこんなパンに願かけるタチじゃないわよ」
そう、結局あたしは武人と別れず、ずるずる付き合っている。
ああ、なんてダメな人間。
あたしは武人と付き合いながら、サナと笑いあって、キャンバスに向かう矢島悠斗の背中を思いながらイチゴメロンパンをかじっている。
ジャムの味がメロンパンの甘味より強くて、結局ジャムパンの味しかしない事に、少しの虚しさを噛み締めて。