春夏秋冬

「でも、待てなくて電話した」

「!!」

あたしは一瞬、呼吸が止まった。

呼吸だけじゃない、あたしの周りの世界が動きを止めた。

一瞬の無音の世界に引きずり込まれた。

そして、夕方の賑わいがあたしの耳に戻ってくる。


「や、じまくん、」

あたしの喉は渇いてしまったように、とぎれとぎれの音を発した。


「悠斗でいい」


矢島悠斗はあたしの頭にくしゃりと手を置く。

そしてその右手は滑るようにあたしの左手を握った。


「悠斗でいいよ、サナ」
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