春夏秋冬
のまれる
ユウト。
そう呼ぶのに慣れるのは、たいして時間がかからなかった。
あの時、あの公園で握られた手は熱く、あたしの心までぐっと握りしめられたように捕らえられてしまった。
矢島悠斗という、静かで大きなものにあたしの運命は絡めとられてしまった。逃げることなんて出来ないのだと、意識の奥底でうっすらと納得していた。
ユウト。
あたしが握られた手に困惑しながら小さく名前を呼ぶと、ユウトは笑った。それはどこかホッとしたような、穏やかな笑顔だった。けれど瞳の奥にはちらちらと青い炎のような冷たい何かが蠢いていた。
2学期が始まって、あたしとユウトの学校での関係は1学期と変わらなかった。
ユウトは、学校ではあまりあたしと関わらないままだ。
そして、休みの日にたまに二人で海に行く。会話は相変わらず少ない。冷たくなった海風は、あたしとユウトの間を埋めた。