春夏秋冬
矢島悠斗の関係を、しばらく真実にも話さなかった。というか話せなかった。なんと言っていいのかわからなかったからだ。
はっきりと、好きだと言われたわけじゃない。
付き合おうと言われたわけでもない。
あたしとユウトの関係は、なんだかひどく危うい。
「サナ」
休日、お昼時のファーストフードの喧騒の中、真実があたしの名前を呼んだ。
「携帯鳴ってる」
ディスプレイを見れば、矢島悠斗の文字。
「あ、ちょっといい?」
「どうぞ」
あたしは電話に出る。
「もしもし」
『もしもし』
「どうしたの?」
『あ、いや。今外?』
「うん。真実と一緒に買い物してたの」
『ああ、そうか。そういえばそう言ってたね。じゃあまた夜に連絡する』
「うん、わかった」
ユウトが電話を切ったのを確認して、あたしは電話を切った。
「誰?」
自分の名前が出たからか、真実は怪訝な顔でそう言った。
あたしは一瞬迷ったが、隠すようなやましいこともないのだと思い直し、口を開いた。