春夏秋冬
五月のおわり
入学して一ヶ月も経てば、最初はよそよそしかったみんなも馴染んで、クラスでの位置もはっきりしてくる。
…はずなのに。
窓側一番後ろの席に座る矢島悠斗には、なにかしら独特の雰囲気が漂っている。
入学式の日、あの桜の花びらの中で出会った男の子。
…。
……。
………。
「サナ!」
はっとした。
後ろの席の真実があたしをよんだのだ。
「なに?」
「なに?じゃないわよ、ごはん!あたし購買に行くけどどうする?」
真実は入学してすぐに意気投合した友達だ。
サバサバとした性格で、男からも女からも好かれる珍しいタイプだ。
「あ、うん。行く」
あたしはサイフを持って、真実と一緒に購買に向かった。