春夏秋冬
居心地のいい空間に、微妙な関係。
言葉にすればするほど、伝えたい事から離れてしまうようだ。
真実は最初に少しだけ驚いたような声を漏らしたけど、あとはあたしが言葉を失うまで、相槌をうちながら聞いてくれた。そして言った。
「サナは、矢島悠斗にのまれていくのね」
「え?」
「ううん、なんでもないの。サナは嫌じゃないのね。矢島悠斗と一緒にいること」
「嫌じゃ、ないよ」
「なら別に、あたしが口出す事じゃないわ」
真実は笑った。ぱっと光るような笑顔。矢島悠斗とは違う笑顔。
真実は彼氏と別れてからなんだか清々しくなったように感じる。
それまでの真実独特の大人っぽい雰囲気が少し抜けた気がする。相変わらず冷静ではあるけれど。
「そうそう。サナ、新しいケーキ屋さんが出来たらしいよ。行ってみる?」