春夏秋冬



「お茶とカルピスとコーラ、どれがいい?」


キッチンカウンターからユウトが顔を出して言った。


「お茶かな」


了解、とユウトは短く答えて冷蔵庫から2リットルのお茶のペットボトルと500ミリ缶のコーラを取り出し、透明のグラスを持ってあたしの前を通る。


「部屋こっち」


ユウトは和室の先のドアに向かって歩きだす。それについて行くと、和室の前でかすかにお線香の匂いがした。

ユウトは器用に扉を開けて中へ入った。あたしもユウトに続いた。


「…っ」

あたしは言葉を失った。


そこは青い部屋だった。


薄いブルーのカーテンとカーペット、濃いブルーのベッドカバー。たしかにそれだけでも充分部屋の印象は「青」になるだろう。

机は木製だし、小さなテーブルも黒で青くはない。

ただそれ以上にあたしに「青」を印象付けさせるものがあった。

壁だ。

もともとの白い壁紙の上にポストカードサイズの青いものが、部屋中の壁に貼り巡らされていた。
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