春夏秋冬



それは、どこか遠く。

南の島のように明るい空に白い砂浜があるのに、北の海のように暗い海。

あたしは海の中にいる。

冷たさなど、なにも感じない。呼吸も出来る。

吐いたあぶくが上にあがるのを見上げると、光が揺れた。

あたしは水面を目指す。手足を動かすけれど、うまく泳げない。諦めて力を抜くとふわりと体は水面に近づいた。

あたしは水面から頭を出した。ここで、この夢に音がないことに気づいた。

消音ボタンを押したテレビの画面のような世界。

水面下と水面上の揺れの間で、砂浜に寝そべる2つの人影を見つけた。


Tシャツにデニムという普段と変わらない格好のユウトと、デニムに大きめの真っ白なTシャツを着た小柄な男の子。

海から見ていたはずなのに、いつの間にかあたしの視線は2人のそばにあった。

2人は眠っているのか、しっかりとまぶたを閉じていた。

さらさらと2人の色素の薄い髪が、風に揺れている。



あたしはなんだか酷く悲しくなった。
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