【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「そういや優弥はどうなんだ?」
話を変えるように、優弥と琴子の友人のユカリさんについて探りをいれる。
ユカリは駄目!琴子は言っていたけれど。
すると優弥は「へへぇ」とはにかんだ笑顔を見せた。
「結構一緒に遊んだりしてるんだよ。
まぁご飯に行ったりとかだけど」
「へぇ~……」
「って、お前も騙されてると思う?!
だってキャバ嬢だしなぁ~…。俺ってからかわれてるんだろうか」
「いや、そうとは思わないけど」
「へぇ、お前がそう言うなんて珍しいな。
てっきりキャバ嬢なんて夜の女止めておけって言いそうなのに…」
「職業に…差別はないよ。
優弥がいいって思えば、周りになんて言われようと気にする事ないんじゃない?」
「そっか…そうだよな?!」
前までの俺だったら
え?!キャバ嬢?!とか言っていたかもしれない。
でも俺が同居する子は風俗嬢。
怒ったり、泣いたり、笑ったり
感情表現が豊かな、どこにでもいる普通の女の子。
だから琴子がガチで風俗嬢をしているなんて想像もつかなかったし
一緒に暮らしている彼女は、そんな素振り少しも見せない。
でもきっと彼女は彼女なりに悩む事だってあるだろうし
それでも精一杯生きている人間を、下に見たりなんて出来ない。