【完】ボクと風俗嬢と琴の音
肩から降りた琴音は、自分のご飯がしまわれているキッチンの戸棚の前をウロウロしながら鳴いている。
「はいはい、ご飯ねー」
琴音にご飯をあげて
自分のコンビニ弁当はぽいっとテーブルの上に置いて
ベランダに出て行って、一服。
今日も煙草がうめぇ!!!!!
空にまんまるに出ているお月さまを見ながら
大阪でも見えるのかなーなんて考えていると
ちょうど携帯の着信音が鳴り響いた。
画面を見ると’ハル’と表示されていた。
電話なんて、珍しい。
琴音の事が心配でたまらないようだ。
「もしもし~?」
「もしもし!!!!ちょっと!!!」
余りの大きな声に、キーンと耳鳴りがする。
どうやらハルはかなり焦っているようで
「ちょ、うるさ……
もう家着いてるよ…
ちゃんと琴音にはご飯あげたってばぁー…」
「そうじゃなくて!!!
大丈夫なの?!」
だいじょうぶ?
頭に?マークが浮かんで
さっき自分がハルに送ったメッセージを思い出した。
「仕事だってば!!大丈夫だったのか?!」
すっかり忘れていた。
「あはははは~!」
「笑いごとじゃないでしょ!
いま仕事終わってライン見たら驚いて…」
「ごめん、すっかり忘れてた…」
「おい!!!!
めちゃくちゃ驚いたんだから!!」
「あははは~!!ハルから電話なんて珍しいから何事かと思ったよぉ!
ちょっと嫌な客に当たってたさぁ…
でも股間蹴り上げたから大丈夫よ!」
「うわぁ……」
電話口でハルがドン引きしたのが分かった。