【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「次はA社に行くよっ!」
パンツスーツを着こなして
真っ黒の長い髪をひとつにくくっている。
「はいっ!」
そんな木村さんについていくのでいっぱいいっぱいだった。
化粧気の少ない人だけど、黙っていれば美人の部類に入るのだろう。
俺は木村さんの隣でにこにこと笑って
相槌を打ちながら、精一杯話を聞く事に集中する。
特別仕事が出来たわけじゃないけど
何故か昔から人当りの良い人、と言われる事が多い。
だから、取引先の人間には自動的に気に入られる事も少なくはない。
出張の1週間が過ぎようとしていた。
その間
毎日のように琴子と連絡を取っていた。
主に琴音の話になる事が多いのだが
お客さんに本番強要されたというメッセージを受け取った時はかなりビビった。
それって犯罪だろ…? でも電話を掛けたら琴子はあっけらかんとしていて、酷く拍子抜けをした。
仕事ってどんな仕事であってもそれぞれに大変さがあるよなぁ。
そう考えれば、楽な仕事なんて、この世には、ない。
考えてみれば、琴子の仕事って犯罪と隣り合わせで危険。
そんな仕事をしながらもあいつは底抜けに明るくて、いつだって前向きで
尊敬してる部分も沢山ある。影ではきっと苦しい想いを沢山しているだろうに。