【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「いや、木村さんはすっげー仕事が出来て俺とはレベルの違う人間だと思ってましたから」
「何だよ、それ。あんた本当に面白いよね。
いっつもあたしの顔見てビクビクしちゃってさ。
大嫌いって顔に出てるんだよね?」
さも可笑しそうに木村さんが言う。
「や、嫌いってわけではありませんよ。
正反対の人間だから苦手意識はありますけど」
「あはは、ハッキリ言わないでよ!
あたしは別にあんたが嫌いできつく言ったり厳しくしてるわけじゃないよ。
むしろあんたには期待してるし」
「えぇ?!俺を?!」
「入社した時からやたら背がでかくて目立つ奴だなぁーと思ってたら
普段はぼーっとしてるし
でもあんたは真面目だし、仕事もそつなくこなすタイプだから
それに人当りが良いし、人に印象が良い風にしか与えないから
営業には向いていると思う。誠実だしね。
営業は聞き上手が基本なのよ」
木村さんの口からそんな言葉が飛び出すなんて
目ん玉が飛び出るほど、びっくりした。
使えねぇ奴って思われてると思ったからだ。
嫌われてる、とも思っていたから。
「いやいや、俺なんて…
自分では営業なんて向いてないって思ってたところで」
「そう?誰にも悪い印象与えないって大切な事だと思うけど。
それに最近は何だか明るくなったなぁーって思って見てたんだけどね」
「あ!」
「ん?」