【完】ボクと風俗嬢と琴の音

あぁ、この子で良かった。
心からそう思う。



自分の大切にしている物を、他者にも大切にしろとせがむのはただのエゴだと思う。
でもそれを喜んで共有してくれるのは…胸がいっぱいというか…幸せというか…。



ゴロゴロと喉を鳴らしながら俺の体に自分の体をすり寄せる琴音。
目の前で豪快に笑いながら、寿司に食らいつく琴子。
これって尊いよなぁ………。



「どうだった?出張!!」


「めっちゃ大変だった。
苦手な上司と一緒だし
夜は夜で接待だって飲み会があってさぁ」


「うひゃー大変だね。営業マンつー奴ァ。
はぁーサーモンうまいなぁー」


「そういや琴子の方は大丈夫なのか…?
例の客」


「うん!あれからお店にもクレームも来てないし
店長の知り合いみたいだし、変な事はしてこないと思うけど。
ん~ウニ最高ですわぁ~とろけるぅ~」


さっきから、満面の笑みで寿司で食らいつく。

こういうのも1週間ぶりで、何か楽しい。


食事が楽しいって気づいたのは、琴子が誰よりも美味しそうに物を食べるからだと思う。
人が美味しそうにいっぱい食べるのって気分が良い。
4人前の寿司だってあっという間に食べつくしてしまいそうだ。



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