【完】ボクと風俗嬢と琴の音

「あ、そうだ。これお土産」


「えぇーーーー?!」


「琴子が頼んだんでしょ。
はい、大阪限定のじゃがりこ。うちとはライバル会社だけど…」


取り出して渡すと
これまた子供のようにおおはしゃぎ。
これだけ喜んでくれたら、買ってくる甲斐があったなと思う。


「それと頼まれていたたこ焼きキーホルダー」


「うひゃ!!!ありがとうー!!!
超超可愛いっ!!!!!
鞄につける!!」


そう言って琴子は出勤する時によく使ってる一流ブランドのバックを持ってきて
そのバックにたこ焼きキーホルダーを取り付けた。


…なんて不釣り合いな。
つーかあべこべ?



ブランド物が好き!と言っていた。
でも本当はブランドが好きなんかじゃなくって、ブランド物を持ってる自分が好きなのかも、と。
何か強くなれる気がするから…って。
全くブランドに興味のない俺だったけど、ほんの少しだけその気持ちは共感出来るかも。
特別な物を身に着けていれば、少しだけ強くなれる、って。


けれど、一緒に暮らし始めて琴子のブランド物は増えなかったし
そのブランド物のバックに不似合いなたこ焼きキーホルダーを着ける姿は
何か良いって思う。



取り付けたキーホルダーを掲げて「ほら!!!」と嬉しそうに笑う。

その仕草が無邪気であればあるほど、優しい気持ちになれたのは嘘なんかじゃなくて



この1週間。

琴音に会えなかったのも寂しかった。
けれど、君の笑顔を見れなかったのも同じくらい寂しかった

なんて、可笑しな話かな?

< 158 / 611 >

この作品をシェア

pagetop