【完】ボクと風俗嬢と琴の音

隣に並んだら、背の高さが今更ながらに強調される。デコボココンビ。まさにこれが。鏡に映った互いを見て、ふっと笑った。



そんな土曜日は晴天。
まさに秋晴れ。
でも昼間はまだまだ暑くて
病院へのルートを携帯で調べながら


あの頃色々な事を話したね。



家から徒歩15分。
いつも窓からしか見た事のない世界をゲージの中から見る琴音は落ち着かない様子だった。


そして病院では年配の優しそうな獣医がいた。
けれど琴音は獣医を見て毛を逆立てながらフーっと威嚇した。


「わぁ!足が靴下履いてるみたいで可愛いねぇ~
大丈夫だよ~。ちょっと体の状態見せてね~!!!」


猫の威嚇なんて慣れているのか手慣れた様子で


「僕も猫は家で3匹飼ってるんですよ~!」


なんて世間話も交えながら


「うんうん、健康状態に問題はなさそうですね」


シャーシャーとまるで般若のような顔で先生を威嚇し続ける琴音。
こんな姿初めて見た。
…人懐っこい子だと思っていた。
でも知らない人間が怖いようだ。 わたしが初めて会った時は少しも警戒しなかったのに。



「怖いねぇ~?本当にごめんね~?」


「な、何かすいません!この子人にあんまり会った事がなくて」


暴れそうになる琴音をハルがおさえつけて、先生に何度もぺこぺこと頭を下げる。


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