【完】ボクと風俗嬢と琴の音
目的の駅に着いて
押し出されるように車外へ出て
ホームで琴子と肩を並べて歩き出す。
なんていっても、帰る場所は同じな訳だから。
「琴子はーー…
優しい子だよね」
「はぁ?!」
帰り道
街頭に照らされて
少し頬を赤くする琴子。
でもすぐにぷいっと顔を背けて、知らん顔して別の方向を向いた。
「別に!!!!
優しいとか思われたくてやってるわけじゃないから!」
「分かってるつーの!」
照れると口が悪くなるのもデフォらしく
「それにしてもハル今日は遅かったんだね。残業?」
「取引先に行ってから直帰しようと思ったら
少しだけ遅くなった。
琴子も今日は遅いね」
「そう~!
店長に頼まれて帰ろうとしたらもう1本お願いって言われて
しごいてきましたぁ~…中々イかない奴で面倒くさかったなぁー」
「こら!女の子がそんな下品な事を言ってはいけません!」
えへへと舌を出して笑う。
さっきまで車内で怒っていたかと思えば
すっかりご機嫌で
琴音の気分並みにコロコロと変わっていく。
時々忘れてしまう。
彼女が風俗嬢である事も。
本当に普通の女の子で
ちょっと人より派手なだけで、他人への思いやりは人よりもあって
こんな小さな女の子が毎日、知らない男と………
なんて想像をすると言いようのない吐き気がこみあげてくる。
それは琴子の仕事を否定しているわけじゃなくて
綺麗な心を持っている彼女の体に、日々見ず知らずの男の欲望を吐き出される。それを想像しただけで気持ち悪くなってしまうんだ。