【完】ボクと風俗嬢と琴の音
早く帰れるならそれでいい。
…今日はハルも帰って来るの遅いし
琴音の為に早く帰ってあげたい。
ハル、山岡さんと上手くいったらいいなぁ~。そんな事を考えながら、ポテチを食べていた。
「じゃあねー!また呼ぶよ~!」
「今日はありがとうございましたー!
またね~!!!」
お客さんの家を出て
迎えにきているドライバーの車に乗る。
事務所に戻るかと思えば、早々に「本指名が入っている」と言われてがっかり。
まぁ…収入が増えるのは嬉しいんだけど。なんていっても歩合の世界ですから。
けれど指定されたホテルの前で降ろされた時は硬直した。
ここは…先日訪れた
某高級シティホテル。
嫌な思い出が蘇ってくる。
嫌々車から降りて
ホテルの前から上を見つめると心臓がバクバクと鼓動を刻む。
エレベーターの前に立って、再び呼吸が速くなるのを感じた。
指定されたのはこの間と全く同じ最上階、スイートルーム。
まさか、と思った。
誰か違う人が、サプライズでこんな高級ホテルを取ってくれただけだよ、と自分に言い聞かせた。
でも悪い予感は当たってしまうもので。