【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「あ!オレンジジュースもお願い!!」
調子に乗ってそう頼んだら、じろりと睨まれた。
ヒィッ!やっぱり怖い!!
まだ、何故ここへ呼ばれたのかいまいち理解出来なかった。
この間怒らせたのは事実
目の前の男は無言でじーっとわたしを見つめてくる。穴があいてしまいそうなくらい。
取り合えず謝ろう。そう決心をしたすぐ後に大輝から口を開いた。
「この間は、ごめん」
…何が?そう言いかけて口をぽかんと開ける。
この人の口から謝罪が出るなんて夢にも思わなかった。
でも目の前で腕を組む男は、気まずそうに視線を斜め先に移して
膝の上に手を置いたかと思うと、深くこちらへ頭を下げた。
「ちょ!止めてください!!!」
慌てて頭を上げさせる。
困ったように肩眉だけを下げて小さく笑った。
「あの日は…仕事で上手くいかない事があって気晴らしにって隼人がお店の女の子を寄こしたんだ」
隼人、というのは恐らく店長の下の名前。
うんうんと頷きながら、大輝の話を聞いた。
「どーせなら楽しく話せればいいと思ってただけなんだ。
だからあんたにあんな事をするつもりはなかった…。
ちょっとイライラしてて八つ当たりした。
すまなかった」
そう言って再び彼は頭を下げた。