【完】ボクと風俗嬢と琴の音
8.琴子「無意識な優しさごそが真の思いやりである」




8.琴子「無意識な優しさごそが真の思いやりである」








あ。金木犀の香り。


そう感じたのは、今日近所の公園を通り過ぎた時。

夏は強い方だと思うけど
冬は苦手。
暑いのより
寒い方が嫌い。



わたしはいま、駅前のカフェに入って
携帯でインスタグラムを更新している。

インスタというより、にゃんすたグラム?
先日2回目のワクチンを終えた琴音は、去勢手術をした。



入院1日。
帰ってきた時にはふわふわだった毛がお腹の部分刈られていて
痛々しかった。


しかし首元のエリザベスハット姿には笑った。


手術前、琴音が死んだらどうしようと言ったら
ハルは笑いながら死ぬもんか、と言った。


もちろん琴音は元気な姿で家に帰ってきて(お腹の毛はなくなったけど)
ご飯を食べてトイレに行って元気に走り回って
ハルの肩に乗って、窓から外をジーっと見ていた。



180センチ越えの世界。
最初から、わたしとハルに見えていた世界は違っていたのかもしれない。
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