【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「ニャー」
「何?猫の鳴き真似?
ココちゃんは何をしても可愛いなぁ~」
可愛い。そう言って男はわたしを抱きしめた。
ここはラブホテルで、’ココ’は源氏名。
そして向かい合って裸になり産まれたまんまの姿を見せあうふたり。
でもどんなに裸になったって心までは覗けないし、見せあわない。見せない。
だってこれはお仕事だから。
男は適当にわたしの身体を愛撫して
わたしもわたしで男を象徴するソレを咥える。
ゆっくり、でも丹念に。
不思議な形。
今まで沢山の男の人を見てきたけれど、誰ひとりとして同じ形をした物を見た事はない。
こんなところにだって個性はある。
だけど不思議な事に、しゃぶってこすって痙攣して
わたしの口の中に吐き出される欲望は
全部一緒だ。
デリバリーヘルス。
宅配されて運ばれる。
運ばれる先はシティホテルだったり、ラブホテルだったり、自宅だったりさまざま。
でもそこで行われる行為に何ら変わりはない。
吐き出したら終わり。
用済みになったティッシュをごみ箱に捨てるように
ポイっと部屋から追い出されて
その対価としてお金は支払われる。
身体を売る事を生業として生きている。