【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「送ってくれてありがとうございます。
遠回りになっちゃうのに…」
「いや、全然大丈夫だよ。
夜はひとりで歩くの危ないし…」
食事をして、彼女の家まで送る。
同じ繰り返し。
実家暮らしの山岡さん。その実家もかなり立派で
彼女自身も生まれながらのお嬢様らしい。
持ってる人は全部持って生まれてくるよなー…。なんて大きな家を見るたびに思う。
「じゃあ」
「あ、の……」
「夜は、送ってもらうのが申し訳ないですし
今度はあの…休日に…会いませんか?」
突然のお誘い。
しかも休日。
それってデート…だよな。
正直1日いっぱい彼女と一緒に過ごして幻滅されない自信がない。
彼女は少しだけ下を向いて、恥ずかしそうに「ダメ、ですかね?」とこちらを見た。
その瞳が潤んでいる。
可愛いなぁー。
「全然駄目じゃないです!!」
「本当ですか?
じゃあ、またお互いに都合の合う日に」
「はい、行きたい場所とかあったら考えといてください」
琴子に相談しよう。即座にそう思って、自分の不甲斐なさに落ち込む。
琴子がいなかったら、恋愛さえも出来ないのか。
山岡さんを連れて行くお店だって全部琴子が教えてくれる。
だからすぐに琴子に頼ろうとするの…止めた方がいいのは分かってるんだけど。
だっていつまでも琴子に頼ってばっかりはいられないし
でも素の自分で山岡さんを楽しませれる自信なんてないし。