【完】ボクと風俗嬢と琴の音
9.琴子「不実になるとは相手を軽く見ているのか」
9.琴子「不実になるとは相手を軽く見ているのか」
「ご指名ありがとうございまーぁす!」
今日も元気よくお仕事。
このホテルにはもう何回来ているのだか
今日も不機嫌な大輝はわたしを出迎えて、ソファーにどかりと腰をおろす。
「暇だな………」
「すっかり11月で寒いねぇーーー」
「暇だ」
「デパートにはもう冬服も並んでいて
今日出勤前についついウィンドーショッピングしていたら可愛いコートがあって衝動買いしそうになってしまいましたよ」
「聞いているか?俺の話?」
大輝は暇だと言いながら週の半分わたしを指名で呼ぶ。
しかも大抵ロングコース。
けれどプレイ無し。
手すら握ってこない。あの帰り際のキス以来指1本触れようとはしない。
何考えているかはいまいち分からない。
どうして呼ばれているのかさえ
けれどとても楽な時間。これで給料が発生していいのかと思えるほど。
「買い物でも行くか?」
「いや、ここデリヘルですし
わたしはあなたと建前上ここであんな事やこんな事をしていなければいけないわけなのですが」
「お前に欲情などしない」
たまにイラっとする事を言い放つけど
本質は優しい人なのだと思う。
人にはそれぞれ事情ってもんがあるから、詮索しようなどとは思わないけど。