【完】ボクと風俗嬢と琴の音

「これからご飯でも食べに行かないか?」


「時間外ですので、別料金が発生してしまいますが」


冗談で言ったつもりだったけど大輝は大真面目な顔をして財布を取り出した。


「幾らだ?」


「いや、冗談ですって」


真面目なんだか、天然なんだか…。
天然といえばハルには負けるけども
お金持ちで傲慢で感じ悪いと思うところがあれば、えらく純粋な時もあったり

全く読めん。西城大輝。



「プライベートでお客様と会う事は禁止されているので」


「それは隼人に話をつけるから大丈夫。
琴子の好きな物を食べに行こう。
そしてデパートに行って、欲しいって言ってたコートを買って……」


「ちょちょ!ストップ!
大輝、それはマジで困る。
大輝が何考えてんのかはあたしには分からないけど
あたしは……確かに時間内で体を売ってる。でも時間外では自分のプライベートを切り売りするつもりはない。
ましてや自分の欲しい物をタダで買い与えて欲しいとも全然思わない。たかがデリヘル嬢が何生意気言ってんのって思うかもしれないけど
こんなあたしにだってプライドはあるんだ。馬鹿になんかされたくない」


てっきりいつもみたいに感情に任せて怒るかと思ったけど
大輝はしょんぼりとした顔をして下を向いた。


「馬鹿になんてしていない…」


小さく呟いた。
そして顔を上げて、切れ長の瞳をこちらへ向けた。

あぁーーー…
やっぱりこの人は整ってるなぁ。
同じ奥二重なのに、こうまでも違う物なのだろうか。
持っている遺伝子の問題なのだろうか。

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