【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「おつかれーココちゃん」
「おつかれさまでしたぁ~
疲れたぁ~早く帰りたい!
今日楽しみにしてたドラマ録画してきたからさ!!」
「ああ、あの話題の恋愛ドラマ?
ココちゃんってミーハーだよね」
送迎者に乗り込むと
勤める風俗店「リップス」のドライバーさんが陽気に話を掛けてくる。
もう長い付き合い。
同い年の澤田くん。
デリヘルのドライバーなんてやってるもんだから、ロクな男ではない。
そこで働いているわたしが言えた台詞じゃあないけど。
「ミコちゃんに澤田くんの相談されちゃって」
「あー適当に流しといて。
面倒臭いからさ」
ハンドルを握りながら、根本が黒くなっている金髪の頭を掻く。
ミラー越しに目が合った澤田くんは本当に面倒臭そうな顔をしていた。
「ミコちゃんの腕の傷が……痛々しい…」
「本当だよなぁ。自分で自分を傷つけるなんて意味がわかんねぇよなぁ」
誰のせいで!
喉元まで出かかった言葉を飲み込む。
余計な事は言わないに限る。
わたしたちは確かに普通の女の子だけど
性を売り物にしている以上
普通の女の子より消耗していくものは気づかないうちにある。