【完】ボクと風俗嬢と琴の音

「俺の本音を教えてやろうか?」


「本音、とは?」


ずっと本音言ってきてるじゃないか。
馬鹿だとか
ブスだとか
女らしくないとか
好きな事を好き放題言ってきてるじゃないか。


しゃがみこんでいた大輝はわたしへと腕を伸ばして
そのままグイっと引き寄せた。


男には色々な匂いがした。
汗臭い人もいたし、元々体臭の強い人も
口が臭い人もいたし、香水をつけていないのに汗が甘い香りの人もいた。
ハルは柔軟剤の優しい香り。


でも、今抱きしめられた大輝からは
香水の爽やかな香りと汗が交じり合った、男の匂いがした。



「琴子を抱きしめたい。
裸になって、抱きたい。キスをしたい。
デリヘルのプレイなんかじゃなくて
普通の恋人同士がするようなセックスがしたい」


言葉の意味を暫く理解出来なかった。


「それって…あたしにソープ嬢になれって事?」


あくまでも
デリヘルは口と手での奉仕のみ。
本番行為をしているデリ嬢なんて星の数ほどいただろうけど
わたしはいくらお金を積まれようと絶対に本番はしない。
自分で決めたボーダーラインを破る真似はしない。
それがデリヘル嬢であるわたしを支えるプライドだったのだから


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