【完】ボクと風俗嬢と琴の音
しかし今日はより一層派手だ。
髪色だけでも目立ってしまうのだから
普通中の普通の俺と一緒にいると
逆に目立ってしまうのだ。
「ねぇハル、どっちがいい?」
琴子が手に取ってたのはパーカー。
どちらも白でもこもこしている生地の奴と普通の奴。
ちょっとオーバーサイズで、いかにも琴子っぽかった。
「もこもこしてる方が琴子っぽい」
「だよね?あたしもそう思ってた。
これちょ~可愛いよねぇ~欲しいなぁ~でもなぁ~」
「何?高いの?」
「うん、4900円」
何だ安いじゃん。
「やっぱり止めたー。
節約節約」
そう言って琴子はパーカーを棚に戻した。
お金遣いが荒くてお金がない。
暮らし始めた頃に聞いた話。
けど、一緒に暮らし始めて琴子が金遣いが荒いと感じた事はなかった。
実際暮らし始めた頃は貯金ゼロだったわけなんだが
今はお金を使っているようには見えない。
それどころか欲しい物を我慢している。ように見えた。
それもこれも自立するためだと本人は言っていた。
今までの自分から卒業して、ひとりでもきちんと生きていけるようにこの共同生活を選んだと。
月初めに集める家賃が遅れた事は一度だってない。
過去がだらしがなかろうが、現在変わろうとしているのならそこに問題は何もないと思える。