【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「ごちそーさま!」
「いや、全然牛丼だし」
「きさま!牛丼を下に見ておるな!
牛丼に謝れ」
「何だ、それ。
帰りスーパーに寄って食材買って帰るか
何がいい?」
「んぅ~?ハルの料理は何でもおいしいからなぁ~
オムライス~…
ハンバーグ~…
唐揚げ~…」
冷たい風が通り抜けて行って
ぶるっと震えた。
もうすっかり冬だ。
琴子とふたり顔を見合わせて「「鍋だ」」と互いを指さした。
キムチだ、モツだとどんぶり屋を出て話していると、琴子が足を止めた。
視線の先には、アクセサリー屋さんがあった。
「見ていい?」
「どうぞ」
結局自分の買い物はしてないんだから
「あ、俺もちょっと行きたい店あったんだわ
すぐ戻ってくるからゆっくり見てて?」
「あーい。あぁこれ可愛い~」
すっかりアクセサリーに夢中といった感じで
俺は今来た道を引き返していた。
昼過ぎになって更に人が増えた気がする。新宿ってなんでこんなに人が集まるんだろう。
やっぱり人混みって嫌いだな、歩いているだけで憂鬱になる。
でも今日は悪くなかった。
キムチ
もつ
寄せ鍋
あぁちゃんこ鍋ってのもいい。
石狩鍋も(でも琴子は九州出身だから知っているのか?)
幸せって、寒い冬の日の鍋みたいだなぁ。
そんな事を考えながら歩いていた。