【完】ボクと風俗嬢と琴の音
だからわたしはこの仕事をしている限り
自分が真っ当な恋愛が出来るとは思っちゃいない。
じゃあこの仕事を上がれる時っていつ?
時々そんな日いつまで経っても来ないんじゃないかと思う。
消して過去は消せないんだから。
わたしの身体はもう無数の男の手垢がついている。
インスタとツイッターはあれから毎日チェックしている。
ハルに言い出す事も出来ずに
ハルの偽りなき笑顔を曇らす日がこないように、祈っている。
わたしはあいつに恩がある。
目に見えない、大切な物を沢山もらった気がする。
出会って数か月なのに。 だからハルはハルの望む人と幸せになってほしい。
「ねぇ、ココちゃん
幸せって何なんだろうね?」
ミコの泣きそうな笑顔。
幸せは幸せだよ。 その名のごとく、辛いに1本線を足して幸せだ。
けれど大人になっていくたびに、色々な物事を知っていくたびに、簡単な線ひとつの足し方さえ分からなくなっていくのだから
だから猫はいい。
うれしかったことしか、記憶していないんだから
幸せの上書き保存だけ出来るのだから。
この頃のわたしといえば、思う事はハルの笑顔を守る事ばかりだったのだから
どうか山岡さんがハルの笑顔を曇らせる日が来ることがありませんように、守ってくれますように
その役目は、わたしではない。