【完】ボクと風俗嬢と琴の音
暇な平日
午後から指名が入った。
久しぶりの例のホテル。
けれど車からおろされて直ぐにフロントで不機嫌そうに立ち尽くす男に会った。
「お久しぶりです」
「おお」
「何でフロントに?」
「待ってたんだよ」
「じゃあお部屋行きましょうか」
「ずっと待ってたんだけど?
なーにがプライベートな時間は空けます、だ。
なーにが後から連絡しますだ。
待てど暮らせど連絡なんか来やしない」
不機嫌そうに壁に寄りかかって腕を組む大輝。
その姿を見て、あ、と思った。
そうだった。別れ際そんな事を言ったような気もする。すっかり忘れていたけど。
この男は、あんなしたかしてないか覚えていないような口約束を覚えていて、ずっと待っていたのか。
案外可愛いところがあるじゃないか。と同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
自分の発言には責任持とうよ。
「ごめんね…」
「隼人には許可は取ってある」
「へ?」
そう言った瞬間
大輝はわたしの腕を強引に引っ張って、走り出した。
「どーしてこういう展開になるんでしょーか」
「琴子が悪い」
振り向いた大輝が子供のような笑顔を見せた。