【完】ボクと風俗嬢と琴の音
絵にかいたような高級車。
乗った事もないような外車。そしてこの先人生で乗る事もないだろう。
ちらりと横顔を見つめる。ハンドルを握っている大輝。様になるなぁーと思いながら
けど窓に写った自分はちゃらんぽらんな、いかにもまともじゃない女の子って風貌。 自分ながら、ちゃらそ~。
大輝の高そうなスーツにお似合いな外車。でも横に乗ってる女がこれじゃあ~ね~。
「あの、どこへ?」
「あぁ?コート欲しかったんじゃねぇの?」
「だからそれはいらないと何度も言いましたよね」
「じゃあ適当にショップでも入るか?
ブランド物好きだろ」
「大好きっ!」
正直に言ったら、大輝はプッと笑った。
そしてこちらへ顔を向けて、言った。
「ヴィトンか?グッチか?エルメスか?」
「その中だったら断然ヴィトンです。
定番が好きだから
あ~今期の新作のバックをインスタで見たんですけど可愛かったなぁ~~
もこもこなんですよ」
「おおじゃあそれ買ってやる」
「60万もするんです」
「そりゃ安い。じゃヴィトンで」
そう言って、大輝は反対方向へハンドルを切り出した。
それにはさすがに焦った。
60万を安いと言い切ってしまうところも、自分の世界とは全く違う場所にいるこの人も。
そう考えてしまえば、ハルだってわたしとは全く違う世界を生きていたのだけど。