【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「何だよ!」


「分かっちゃいねぇなぁ~
大切な人の事を考えてプレゼントを選ぶ時間が楽しいのです。
そして人は自分の事を考えて悩んでもらったプレゼントほど嬉しいのです」


「わっかんねぇなぁー」


「欠落してるんですよ、あなたは」


言い返してくるだろうなぁと思っていたら
大輝は意外な反応を見せた。
怒るでもなく、わたしの手の中にあるふたつの首輪を見つめながら


「やっぱり欠落してるよね?」


と苦笑いした。


「でも俺はずっとこうなんだ…
親父もおふくろも好きな物を好きなだけ買ってくれて
俺は勉強だけしていればいいって言って
言う事を聞いていれば良い子だって褒められたから
そうやって育てられたから、誰かを喜ばすのには物を買ってやったりとかそういう事しか思い浮かばない」



お金持ちもお金持ちで大変なのかもね。



「でもそれは大輝自身のせいじゃないじゃん。
育ってきた環境のせいじゃんか。
それは親からの呪いでしょ
でも大輝はもう大人なんだから、もう自分の事は自分で決めな

人がどーやったら喜ぶか、その頭で自分で考えてみな!」


ビシッと指をさして言ってやったら
なんだよそれ、と大輝は腹を抱えて笑った。
あぁ、良い笑顔で笑えるじゃんか。


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