【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「それにしても可愛いねー
キャーあの猫ちゃんかわいー
あ、あっちの白いのもっ!」
「買うか?」
わたしは再び大輝を睨みつけた。
それに大輝は焦ったようにあたふたし始めた。
「簡単に買うなんて言わないで
命なんだから………」
ガラス越しには何匹も猫がいた。
どれもこれもお高い値段のついた猫ちゃんばかり。
血統書がついていて、種類の名前まで書いてある。
そういう情報なんて知りたくない。
毛の色とか目の色とか違ったって
血統書あるなしなんて関係なく、猫は猫じゃないか。
命に値段がつけられる。1枚ガラスを隔てた場所で、沢山の人間の見世物のようになって
「何か、可哀想だな」
大輝の口から意外な言葉が出た。
「こんな狭い所に閉じ込められて
人間に見られて心も休まらねぇ。
自分だったら耐えられねぇな」
「大輝は猫は好き?」
「嫌い。
犬も嫌い。
つーか動物全般が嫌い。
くせーし、役にたたねぇーし、何でわざわざ足手まといの存在を面倒見るかなんて理解に苦しむね」
「ふっ」
正直に言うところ、結構嫌いじゃないよ。
偽善者よりかずっと良い。