【完】ボクと風俗嬢と琴の音
「へぇーほんとーに人間がこんな家に住めるのかー?」
どうしてこんな展開になったのかは俺にも分からない。
何故この男がここまで強引なのかも…
「猫の家かと思った」
他人の家にずかずかと上がり込んできて
俺の座椅子にどかりと腰をおろす。
琴音は知らない人が来たと気配で察したのか、キャットタワーに備え付けられている小さな小屋で丸まっていた。
目だけを光らせて、こちらを見ていた。
「へぇーこれが例の琴音ちゃんね
こんにちは、猫ちゃん」
琴子がどれだけこの男に話をしたかは知らない。
でも琴音の名前を知っている事にイラっとした。
琴音は小屋から顔だけ出して「シャー」と男に威嚇した。
優弥や山岡さん、動物病院の獣医に見せるのと同じ態度。
「うわー可愛くねー
だから猫は嫌い」
一人で喋っているのは、おそらく西城さん。
琴子を指名しているって言っていた、西城グループの御曹司。
雑誌では見た事があったけど、実際に見るともっと綺麗な顔をしている男で、そして威圧的だった。
琴子はちょこんと床に正座をして、バツの悪そうな顔をしていた。
いつもは騒がしいくせに、こんな時に限ってだんまりだ。
そして俺の機嫌は何故か悪い。