【完】ボクと風俗嬢と琴の音


「どうぞ」


コーヒーを差し出したら、西城さんはじいっと俺を見た。
つりあがった眉毛と、冷たそうなつりあがった目。



「デカいね」


「はぁ、まぁ…」


「俺もデカいとは思うけど、それよりもデカいね?」


「そうですね……」


「あぁ、挨拶が遅くなって申し訳ない。
自分はこういった者で
決して怪しい者ではございません」



そう言って西城さんは胸ポケットから名刺ケースを差し出した。
西城大輝。西城グループの御曹司。
慌てて鞄の中から名刺を取り出して、渡した。



俺の名刺を見て「ふぅん」とだけ西城さんは言った。

つーか何で名刺交換だよ。
これは仕事じゃねぇーし、会社でもねーし!




「ちょっとぉ…大輝帰ってよ…
強引に家まで上がり込むって…。ここあたしだけの家じゃねぇし…」


「いや、琴子が一緒に暮らしてる’男’つーのも見て見たかったし
どうも、井上さんいきなりお邪魔してすいませんでしたね」



今度は作り笑顔。
怖いくらい、張り付けられた笑顔。
優しさの全く感じられない、冷たい笑顔。苦手だって思った。

それにしても男の俺でもついつい見とれてしまう程綺麗な男だ。
妙な色気がある……感じの悪い男だ。


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